「KITTE博多」2016オープンと共に1Fにしつらえられた店舗。福岡のマクロビオティック率いるエヴァダイニングによる出店。

 

 

 

マクロビオティックの思想の中に、食物そのものの生命力を頼りに日常生活を豊かにしようという姿勢は、私たち建築を作る人間の幾ばくかにも共通したところがあるように思います。大きなレジカウンターは栗の木ですが、食べ物を扱う店だから、多くの選択肢の中から、人間の食べ物が生る木というのは選択基準の一つだろうと思いました。食べられない建築であっても「美味しそうな」という比喩を便りに素材を組み込んでいきます。

 

野菜をはぐくむのは土。商品が陳列される背景は、名実ともに、背景としての土。そのまま壁天井の内装へ、そして棚の素材として。土はほおっておくとヒビが入る。ヒビを全く生えさせないのが土のの技術はありますが、ここはあえてそうしない。都市の中には普段はお目見えしない土の本性が、この硬い都市施設の一角に出没しています。

 

ヒビはしかし、一旦生やそうとすると、人間が完全に制御できません。実際、この店舗でも、野放図にヒビを許すのではなく、地面から天井に向かって、ヒビが段々大きくなるようにと、人間の方からコントロールしようとしたのですが、実際は、事前に製作した見本のようにはいきませんでした。微妙な塗り厚の違いで、ヒビの大きさが揺れる。その揺れは、人間の手の揺れを自然が正直に表現している、ということでもあります。人間の作為とそれより大きな原理の相克。現代の技術の発展の目的は、自然の完全制御ですが、いざ、制御してしまうと、案外面白くないという側面があります。人間の作為と無情なる自然の原理の相克が、深く面白いのだと思います。