このプロジェクトは、施主が工事請負業を行いました。そして、設計者はその全体デザインと工事の監修、それに加えて、室内左官工事のワークショップを請け負いました。全ては、空間としてのある種の質を保ちながら、前代未聞のローコストを目指すためでした。

ローコストは、おそらく全ての建設行為に共通したユニバーサルな命題、それよりも当然に、このお店のオリジナリティーであった、エージングというところから、いくら予算がなくても、室内の仕上げは、良い年の取り方をするものでなくてはなりませんでした。漆喰塗りは、最初から条件内だったので、予算的に見て、ワークショップを行うしか、すべはありませんでした。

 

美容室としての、もう一つのトライアルとして、美容室としての定型からいかに自由になるかということでした。入り口を入って、受付カウンターがあり、その脇に待合コーナーがあり、そしてカウンター付きの客席がある、という美容室としての当たり前の構成は、このお店は一つの天板に集約されています。カット席と待合席は、固定されつつも、いつでもロケーションを移すことができます。

 

 

時間が経つにつれて、見苦しくなる素材ではなく、時間と共に、歩んでゆける素材を選び、その素材を直に手に取り、ああでもない、こうでもないと、煮炊きする。そういう片鱗がディテイル(細部)や、たたずまい、表情、に露わそうと、デザインしています。

 

店主が基本一人で営むことのできる、スタイル。重厚長大なデザインではなく、身軽で軽快なデザインへ。

建物は、築30年を超え、必ずしも行き届いていないが、そういうところも抱えながらの店舗の存在。