風通しの悪い旧宅暮らしの反動が、そのままこの家の設計の土台となった。福岡市の夏は、7割が北側(海側)からの風であることをデータで確かめ、その風向を効率的に受け入れつつ、接道側でもあった同一面(北?東面)のプライバシー確保の矛盾を解決するためにいくつかのことを考えた。一方、南?西側に接する父母の住む母屋と親戚の家、この家とによって囲まれる外部空間の豊かさを想像しながら、そして保存樹である銀杏の大木と正対することを、この家が守るべき基本的な所作だろうと考えている内に、悩ましい数種の配置計画は、自ずから単純なL型に収斂していった。

今回は、施主が既に10数年同一敷地に住んでいたこと、そして近くの河川の存在などから、風向が限りなく特定できたことが、この家の開口計画を成功させた因子となった。海から河を伝ってきた北東からの涼しい風、これを受け止めるように、L時頂点の開口部は開いている。風を効率的に受け止めるベルマウスの原理を参考に、その他の穴(=開口部)に同一のカタチがくり返される。
外装については、主に定番のガルバリム鋼板を用いたが、建築の外装として考えるのではなく、なにか自然の造形(自然物)を暗喩できるようにと、岩質地形の一種である柱状節理を想像しながら、ハゼは15度の角度をつけた。そうなると、そこに建築の部位である開口部は本来的に邪魔であった。この矛盾を解決するために、壁内通気層を設け、見える開口要素を最小限に留めた。この見えない風穴によって、2Fの通風は行われている。

〇法規との関係
準防火地域が強いる延焼ライン内の建具の防火規定が、この家の開口計画に大きく関係しました。町並みとして、「住宅」にではなく、「人工の隆起物」に向かうのであれば、「住宅」を強くイメージさせる住宅用のアルミサッシは極力避けたいと思いました。建具は可能な限り、延焼ラインの内側に避難させ、どうしても難しい場合は、壁内通気や床下通気を室内通気に用いる、あるいは住宅用アルミサッシと木製建具を並列させるといった実験的な開口計画を行いました。

 

〇母屋や隣家との関係
北と東に前面道路、南と西に、両親と親戚の家、そして市の保存樹である銀杏の大木というロケーション。配置を前面道路、つまり角地に沿ってL字とすることで、隣地の2棟と銀杏の大木に囲まれてできるボイド空間を発見し、配置を決定しました。建主からも「室内空間は最低限の大きさがあればいい。その分効率よく内部の温度調節もできるし、真ん中の庭に向って過ごすことで空間の広さは獲得できる」という意見が生まれ、L字の室内空間については、とりわけW寸法の最小値が模索されました。上棟後に解りましたが、この中心のボイドはそれぞれの住人にとっても、直接的、間接的に有効な庭となりました。