使われずに物置となっていた和室、リビングと離れ家族の見えないキッチン、これらの課題を克服するために始まったリノベーション。
不要な収納を撤去し、キッチンカウンターや空調を据えた、リビング/ダイニング/キッチンの全景。

(左)押し入れや垂れ壁を撤去し、二室を一室へ  (右)同じアングルからの既存状態。

 

 

リノベーションとは、そこにある価値を見いだし、表現することで、新たに発見してもらうことではないかと考えている。

ここでは、趣のある建具はそのままに、キッチンという機能に見合わなくなった畳を杉の無垢フローリングへと置き換え、閉塞感を生んでいた合板天井を穿ち、小屋組を現しとしている。また、収納を撤去して現れた和室との間の柱は、鉄骨梁を入れて抜きさることも出来たが、新旧空間の境界として、長押とともにここへ居てもらうことにした。

再び、同じアングルからの既存状態。かつての和室は、使われないまま、物置として不遇の生活を送っていた。

 

真壁という日本建築の魅力を残しつつ、まだらに経年劣化した既存のじゅらく壁は下地に残し、チリが少し残るくらいに白色漆喰を上塗りとした。柱と壁の間に、厚みという歴史を刻んでいる。

先述の通り既存小屋組を現しとし、狭く、暗かった部屋を、高く、明るい空間へと変えている。 梁を伝うダイナミックな照明器具は、施主支給のアンティークシェードランプ。

キッチンカウンター+コンロは、既存和室の押入+板床をつなげた長さとし、使い勝手だけでなく、空間の広がりを感じさせるダイナミックなものとしている。

また、下部収納は可動棚板などの必要最小限にとどめ、生活しながら必要なものを足していくという、ものづくりの余韻を施主に託している。既存の天袋開き戸の仕上は、ここにあった床の間の網代天井を継承させた。

キッチンであった場所は、床や、不要な収納を外し、広い土間として転生させた。土間には、勝手口から帰ってすぐに魚を捌くという施主の要望を満たすため、流し付きの長いカウンターを設置している。

床をなくし、基礎に近いレベルの土間とすることで、これまでになかった天井高さを確保し、既存開口や床の高さとも新たな関係を生み出している。正面玄関に劣らない広さの、大人も子どもも遊べる自由空間となった。