2009. 6. 6 permalink
竹とステンレスの車止め
独立後最初期の建築が8年目を迎えようとしている。その間、施主さんはすべての手入れを当初の設計者に依頼しているわけではない。頼みたいが、こんな小さなことで呼び出すのは、とむしろ遠慮していることがままある。また、「こんな小さなこと」であれば、意匠的に大勢には影響なかろうという考えもあるかもしれない。この美容室は、戸建ての木造で、しかも駐車場が4台分ある。その車止め、当初は竹と木でつくっていた。純粋な竹と木、そしてシュロ縄では、やはり持ちが悪かった。そのうち、なんだかよくわからないへんなものに入れ替わっていた。しばらくは見て見ぬふりをしていたが、ついにその得体の知れないオブジェを見て、「もしこれを作り換える時は一声掛けてください」と施主さんに、申し出ていた。その後、そのことを覚えていてもらったようで、今度の作り替えはきちんと用命いただいた。8年前とは考え方を変えて、竹+ステンレスの構成とした。(コストも当初よりは掛けて)据え付けてみると、赤土の土間や壁の外部空間によく似合った。以前のものがあった時の気持ちの悪さが、スーーっと、引いて、見慣れた全体がなにがしかの新鮮さを取り戻した。些細な部分に過ぎないが、こんなものががおかしいだけで、全体がもろくも駄目になっていく。こういうと、気難しい専門家のようであるが、仕方がない。どんなにすばらしいスーツを着ていても、足下の靴が「靴卸売りセンター」製の合皮の輝きを放っていたとしたら、もはや上着を含めた全部が信用ならなくなる、と例えるならわかりやすいだろう。