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2018. 9. 9

第183(日)技術のデザイン-5(クラゲスツール)

IKEAのALSEDA。なんとも高さの曖昧な、たぶんそれが面白くて、宛てもなく衝動買いをしていた。その後、どの生活のシチュエーションにもフィットすることなく、屋根裏行きとなっていた。暑い季節になって、バナナ繊維の座面が気持ちよさそうに思い起こされ、仕事用の椅子として使ってみようと思いたった。背もたれはないが、背筋を鍛えるのだと諦め、この不思議な厚みの座椅子に脚を付けた。

脚材はこれまたホームセンターなどで売っている竹製の伸縮フェンスの竹部分。フェンスをゴミ箱に改修した時に分解して出たφ12前後の細竹。ALSEDAはビニールコーティングされた鉄網を心材にして形作られていて、その既存フレームを頼りに竹材をプラスチック結束バンドで結びつける。竹を用いると、ビスとかなんとかは効きづらいので、自ずからこういう接合になる。

行けるかもと頭で描いていたイメージが、実際にそのとおりになると、発想〜製作作業は俄然愉しくなる。竹材は斜めに拡がるように取り付けることが出来たので、安定感も良いし、椅子としての強度も得られた。脚の数は蛸と同じ8本。ALSEDAの骨組みの構造に従うとこうなった。それではタコスツール、と行きかけたが、極細の脚とモッタリした頭のカタチから、これはクラゲ以外の何者でもない、と命名神が降りてくる。ひっくり返すと傘の内側が垣間見えて、なんだか気持ち悪いクラゲの懐と益々似るなと思い、バンドの余長は切らずに、野放図なチョビひげをそのまま蓄えた。元の値段4000円の椅子。クラゲのシーズンインと共に、クラゲスツール。

物作りの種類としては、既成の即席ラーメンに、タマゴとかゴマとか海苔とか、あれやこれや足してカスタマイズする類いと同じだろうか。みんな知っているアレ、だがちょっと違う。既製品の完成度を利用して、別の新たなモノを作る。

建築一棟だって、おそらく同じ考えで作ることができるはず。あらゆるリノベーションは、そうではないか、となりそうだが、ちょっと違うだろう。リノベーションには、既存に対して必ずしもポジティブなだけではない。悪いと思うところは大きく切り取る外科手術の側面がある。もう少し既存の完成度に対して全肯定的な付加作業なのだ。みんな知っているアレ、であることも話しとして重要だろう。事例を頭の中から探るが、まずは、石山修武のコルゲート作品だろう。コルゲートの部材がつくりだす既成のR寸法の組み合わせからあの断面形状が生まれて、本来空洞にしかならないところに、工芸レベルの鉄の壁がはめ込められ、下水管は空間になる。この話しに完全一致する。あるいは、坂茂氏のコンテナ美術館や仮設住宅もそうだろうか。紙管による一連の作品は?素材レベルであれば、この技術の醍醐味が呆けそうな気がする。それ以上が、直ぐに思い当たらない。いずれにしても、完成度を借りて新しいものを作るというのは、狭義には成立しにくいものづくりなのかもしれない。

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