Stair house ステアハウス 2021新春完成予定

Stair house ステアハウス 2021新春完成予定

カテゴリ
集合住宅 新築
敷地
福岡市早良区西新1丁目-7
用途
集合住宅
構造形式
RC造
工期
2019/10月01日〜2020/12月末まで
特記
・全39戸の賃貸集合住宅(2021年新春募集開始)
・東側のE棟、西側のW棟それぞれが単独の敷地となり、さらにそれぞれは南と北の二棟に分かれている。計4棟で一つの中庭を囲み、暮らす。
・階段状の建物に階段が配置され、日常的に階段を用いることを想定している。
・賃貸部計39戸の内、大小の違いをもって30パタンの住戸が内蔵されている。
・国産無垢杉材と漆喰という、日本の建築に馴染みある自然素材を内部に多用。外部の手すりも全て、鉄の剛性を借りながら、杉材にて構成している。中古集合住宅のリノベーション手法としての「漆喰と木の室」の新築バージョン。
・コンクリート躯体の蓄熱性能が最大に引き出されるよう、外断熱工法としている。熱帯夜、極寒夜にエアコンが消せるように。

1.カタチのはなし 「ステアハウス」
一般的な設計方針で答えるなら、ここには、7~8階建ての縦長のマンションが2棟、一つの階の住戸の組み合わせが上に積み上がり、いわゆる基準階型の平面図=ハーモニカ型集合住宅ができあがっていたはずです。

でも、高さの高い建物は後にも先にも沢山できるから、ここには、同じ住居面積でありながらも、なるべく高さの低い集合住宅を建てよう、となりました。つまりは、いかに水平方向に拡がっていくかの命題。敷地は、4m未満の前面道路(二項道路)×条例の都合により、それぞれ1000㎡以下の2つに分割するのが最良となり、結果、自ずから二棟に分かれて、その間に中庭ができます。そこに光を取り込もうと、南側が空に開く段丘状のカタチになります。そこを皆が登っていけるように階段が掛けられると、この段丘状のカタチと階段の相似的構成からステア(=階段)ハウスという名前になりました。

賃貸の住戸は全部で39戸。敷地のカタチや、駐車場付置義務の類いの条例等の規制が遠因して、細かな違いを含めると30戸は、それぞれ何か異なっています。敷地のカタチや法律の複雑な絡みを解く上で、同じ住戸を作ろうという意思がなければ、自然に、同形の繰り返しではない住戸区画が並びます。また、設計の過程においては、沢山の「間取り」がエスキース(下絵、習作)されますが、これらを一つに絞ろうとする目的がなければ、仮に同一の住戸区画であっても、自然に、違う「間取り」が出来てしまいます。入居者が誰なのか、判らないのであれば、提供される住戸も定められない、というのが、作りやすさ等を度外視した場合の、賃貸住宅の設計に潜在する、本来的な不確定性ではないかと思います。
一人の入居希望者にとっては、結果的には一つの住戸しか住むことができません。ならば、住戸は皆同じでいいか?という命題がそこに生まれます。隣の家は自分とは同じではない、ということの想像の余地は、集まって住まうことの共有感と並行して、自然に形成された町の一画で暮らす時のような、個別性、唯一性の類いを与えているように思います。「効率」は「差異」を嫌うので、とかく、世間からは消えていく方向ですが、大小問わず何かの違いによる、この個別性、唯一性の類いの安堵が、思いの他、私達の精神生活を支えているのではないかと考えています。

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2.素材のはなし 「漆喰と木」
面積や、間取り、その他が異なっていても、この集合住宅は、漆喰と木という素材感は通底しています。漆喰壁は、20世紀後半、日本から急速に消えかかった伝統的な仕上げ工法ですが、自然な吸放湿+消臭性能があることが見直され、独特の味わい、素材感を含めて、現代の建築空間の仕様として復刻しつつあります。※とはいえ賃貸でこれを標準仕様とすることは、未だ異例です。不特定多数の人の住まいにこそ理想を実現すべきの姿勢で、コスト、メンテの問題に挑み続けて参りました。⇒「漆喰と木の室」は、2001年に、空家になる中古賃貸住宅の逆転救済方法=リノベーション手法として、実験運用を開始し、今日までの実践に至ります。この度新築を支援することに躊躇がありましたが、考えてみれば、全ての新築は、古くなっていきます。結局そこに垣根は設けられない、時間の経過に消費されない素材の普遍性を再認し、ここに適用しています。

※公共建築工事標準仕様書1948年版の左官工事に「漆喰塗り」が初出。その後高度成長期の最中1965年に、抹消。そして2019年版に復活。

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また、今日の賃貸住宅では、無垢の木材※①を用いることも少なくなってきたと思いますが、その瑞々しい素材感を大事にして、国産杉材を枠材、障子戸、家具などの室内の随所に用いています。 さらに、外観を取り囲むように杉の手すりが、林立しています。硬いコンクリートの構造物に、柔らかな自然木の組み合わせです。日本人は、根深いところで木が好きな民族だと思う(皆がそう信じている)一方で、日本の林業は、いよいよ大変な危機的状況となっています。※② その木の文化が未来に受け継がれるように、日本の山の営み=林業(川上)が持続できるようにという願いが、この川下(建築現場、または建築)に漂着しています。

※①合板や集成材ではなく、使用する形状で丸太から切り出した木材
※② 絶望の林業 田中淳夫(著)2019新泉社

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3.性能のはなし 「外断熱」

通常の集合住宅は、内断熱です。コンクリートの床壁天井の室内側に断熱材があり、外側のコンクリートは、外気の気温と輻射熱(日射、放射冷却)による熱や冷熱を大きく蓄熱してしまいます。

3-1.ステアハウスは、全戸外断熱工法を採用し、室内側に大きな蓄熱体を抱えています。熱しにくく、冷めにくい。世の中の逆を行っているようにも思いますが、このような性能(性格)の方が付き合いやすいのは、人でも建物でも同じかと。住戸に長く居れば居るほど、自身の冷暖房が、コンクリート躯体に蓄熱され、室温が安定し、体感温度としての理想に近づきます。※③

3-2.外断熱一般として、冷暖房のエネルギーが節約できると言われています。北海道の事例では、新築ではなく、断熱改修、つまり、元々内断熱のマンションを外断熱に改修し、その前後の比較結果が得られています。改修前、就寝前に20℃の室温が、朝16℃まで下がっていたものが、改修後は18℃に留まるようになり、冬の光熱費が30%減になるといった事例報告がありました。夏についても、同様の原理が働き、エアコンを付けっぱなしにしなくても寝られる環境に近づきます。(個人差、部屋の条件差はあるかと思いますが。)

3-3.RCマンション=結露。少なからずの方が経験されているかと思います。RC躯体=蓄熱体が冬風晒されキンキンに冷やされて、その室内側で結露、という構造が原理的に外断熱にはありません。さらには、ステアハウスの室内には、無垢の木材や、漆喰といった、吸放湿性能のある自然素材を多用していて、それらがささやかに調湿を行います。漆喰と木の室の実績上含めて、まず、結露は発生しないと思います。(これもまた、住まわれ方とも関わりますので、絶対とは言い切れません。)

※③人間の身体が実際に感じる温度は、室温(対流熱)のみならず、壁面の温度(輻射熱)に左右されます。
体感温度=(室温+壁面温度)/2  
例えば、室温=20℃ 壁面温度=15℃ の場合、 (20+15)/2=17.5℃ =体感温度
外断熱にすると、この壁面温度が、室温に近づくので、体感温度が快適な方に近づく。

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一方で、外断熱には、以下の2点の注意が必要です。
1.夏に日光を入れると、蓄熱されて、逆効果になる。
さらに逆に言えば、冬の晴れた日中に、太陽光を室内に取り入れると、暖房を用いず、熱を蓄えることができる。
⇒お部屋の方角と太陽角度を考え合わせ、カーテン等の開閉で対処できます。
2.例えば、極寒極暑時、数日不在の後の冷暖房は、目標の室温になるまで、内断熱の部屋より、時間がかかる
⇒大きなヤカンでお湯を湧かすには時間とエネルギーがかかりますが、その分、冷めにくい、という原理と同じなので、仕方がありません。ご不在の時は、上記の様に、カーテン等の開閉により、賢く太陽の熱を取捨されることをお奨めします。

そのまえ