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2007. 9. 23

第11(日)カルダモン・エコポ・ヨーガスートラ

今日は猿仕事(猿でもできるが量のある仕事)の日であった。朝から自宅の雑巾掛け、家業の身辺整理により発生した古本の処分、そして、カルダモンの身解き。カルダモンは数年前シンガポールムスタファセンター(日本で言うならドンキホーテ)にて購入したもので、たまたま奥底から発見し、使う直前の状態にするために、すりこぎでつぶし始めた。カレー香辛料の中では、比較的高級なものの一つである。だからだと思うが、これが良く効いたカレーを食べたのは、本国インドではなく日本のどこか忘れたが高価な一皿であった。尤も、例えボンカレーであっても、このカルダモンを加えるだけでずいぶん雰囲気のよいカレーになるから、事務所にあったら重宝するだろうと思い、汗を流しながら1時間ほどの単純作業を続けた。思えば、この週の初めは、別の単純作業に身を清められたことを思い出した。エコポ×100展。エコポをいろんな人に作ってもらって、それを100個、てのまの天井から吊そうというもの。企画そのものは、誰が発起人であったか忘れたほどに互いに2つ返事であったが、天井から吊そうと言ったのは他でもなく自分であったから、そのオトシマエは自分で付けるしかなかった。9/17日の敬老の日、展示のバランス上100個には満たなかったが約70個分のテンション構造をテグス6号とクリップにて製作。1個につき2本、その数140本。クリップ取り付けという意味では280本。残暑、というより明らかにおかしな気候としての酷暑の中、ひたすら数を要する各工程に私とその道連れになった事務所の2人は、普段とは異なる仕事に顔色が蒸されていた。いや、最もその蒸され方の激しかったのは、他でもなく自分であっただろう。単純作業はキライではない。むしろ人として本当は必要なトレーニングではないかとさえ思っている。だが、複数の物事を進行させなくてはならないという普段の頭が合目的論に染められていたのだ。
機械は壊れるまで飽きずに作業を続けてくれる、という恩恵を知らない時代は、ものづくりの工程は人間の精神力がその推進力であった。人間側にとってはどうであったかというと、(うまく言えないが)必ずしもラクチンな仕事とは言えないが、ここからは鬱病やノイローゼは生まれなかったのではないかという直感がある。むしろ古のこういう単純かつ共同作業の中からは歌(労働歌)が生まれた。いや、(今はやりの)ヨガにおける瞑想や、座禅に似たところがあるように思えて成らない。前者は「心を滅せよ」(ヨーガスートラ第1章)ことが目的、後者は(も)非思量(思惑がない)状態が最終到達点である。我が身体の営みを最も単純な状態に置いて、心の働きを止める。そういう極致の人間の営みと、私たちが日常生活において遭遇していた単純作業には、どこか共通のものがあるような気がしてならない。例えば広大な田んぼに稲を一本ずつ植えていくといった単純作業などは、「いつになったら終わるかな」といった雑念をコントロールできなければ、作業を継続することが出来ない作業であったはずである。
いずれにしても、功利的に考えれば、エコポを吊すなど考えなければもっとラクチンであっただろうし、カルダモンは少々の対価を払って、粉末状のモノを手に入れればそれでよかったところを、お馬鹿な寄り道をした、この一週間の締めくくりであった。

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