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2011. 4. 3

第116(日)「親子のための仏教入門」

「親子のための仏教入門」 著:森政弘/出版社:(株) 幻冬舎/発売日:2011年01月

ぼんやりと、こういう本を書きたい、と思っていたところにコレに出くわした。正直、タイトルだけでは手に取ることはなかったが、しかし新聞の見出し文まで目を通したところで、直ちに取り寄せる。

著者はお坊さんでも、宗教学者でもなく、ロボット工学者、あの「NHKロボットコンテスト」の立役者である。モノを作るという意味で同じ日常を過ごしている人種が、宗教とどのように関わっているか、モノを作るということの根本、本来の目的、上位概念をどのように捉えているか、唯一ここに惹かれた。

本来、仏教の哲学的思考は、とても難しい。原典を独りで読むことは大変であるところを、わかりやすく説き開いていて、いつのまにかやさしいお坊さんに説き伏せられた感がある。ものを作ることの「さしあたって」の目的は、依頼者、使用者、もしくは社会の要望を満たすためであることは古今東西問わず言うまでもない。では、より正しく遍く社会のために働こうと思った場合(つまり、他者や社会の当面の要望が必ずしも普遍的な正しさを持っているかどうか判らない、とした場合)、人はどうあればいいのか。

ここが、思いの他不明瞭なのである。資本主義の原型とされるプロテスタンティズムは、粛正や勤勉を旨とした。その結果が富であり資本とされた。しかし、それが社会の中で極端な不平等を生み出したように、正しくあれと思って自律的に働いても、本当に正しく寄与することは難しいのだ。

また、教育やメディアが提示できるものは、基本、自らの外部から植え付けられる「知識」である。これだけでは、エラーが多くなる。自らの内から起こる「知恵」、ここを培養すること必要性が説かれる。そして、モノづくりの真骨頂へ向かう山道だと暗に示される。あらゆる人間と共通の行動哲学を体得することにより、個人は大きな社会の中で拡がりを持っていく。沢山のモノをつくり、流通させることによって、社会に役立っているという拡がり、例えば、会社が大きいとか盤石である等という価値感とはまったく次元の異なる拡がりがここにある。一棟ずつ建築を作っていく私などにとっては、実は新鮮な「拡がり」という言葉。タイトルに騙されてはいけない。とうに育児本の範疇を超えている。

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