2023. 8. 4 permalink
暑い。という言葉は、今、北半球の合言葉になっているはず。武雄も太陽から免れぬ現場だった。しかしこの現場の夏は、幸運にも、外壁が仕上がり、空調も試運転開始となり、高い断熱性能の漆喰空間の中で、終日、涼しい顔して打ち合わせをすることができた。連日の各灼熱現場でなんだか、熱中症予備軍になりつつあったが、この1日で生き返ったかもしれない。
さて、現場には、お手製の土ブロックが搬入されていた。山口左官にお願いして3ヶ月、幾たびか試作品を経て、これができた。佐賀の「潟」(ガタ)でできた土ブロックだ。これを通常のタイル用接着剤にて、壁にならべる。質感の調整はもちろんだが、軽量化と、強度の獲得に加えて、生産性など、未知のものづくりをお願いしたことにより、クリアすべき項目がいくつもあった。そこを山口さんは、一つ一つ、確実に乗り越えてきてくれた。このような職人こそを職人、あるいは次世代的職人、と呼びたい。あとは、一つ一つ厚みやテクスチャの異なるタイルを、壁にセンス良く、配置してもらうだけの状態だ。
「ガタ土」は、今まで、佐賀でなにかをつくる度に、トライしようとしてきた素材だ。まずは、壁にしたいと思いつつ、なぜか、その時の状況とか、左官屋さんの都合と会わず、実現することがなかった。そこに山口さんは、むしろ自分から、進んで、サンプルを作ってくれた。ガタ土は、素材という前に、有明海北岸にありふれた自然の産物である。泥まみれで、干潟の上で競争する「ガタリンピック」は有名だが、それを用いた建築は、少なくとも現代建築としては、未だ日の目を見ていない。自然地形としてみるガタ土は、テラテラした、ヌルヌル感を感じる、どちらかというと気持ち悪い類の素材感だが、壁土になると、自然が作り出したグレー、が見方によれば、現代的になるはずである。
今回は、「ガタ」は塗り壁としてではなく、ブロックの壁として、登場する予定。楽しみである。