2011. 4. 4 permalink
昨年の今頃は完成直前の2F寝室で施主さん一家と大工さんたちと花見をした記憶がある。建物は60年近くの年齢のもので、敷地内の桜は、4〜50年ぐらい。一年点検と花見が同一敷地で同一時間に行える機会は滅多にない。木製建具等その他不具合の修正作業を終えて、庭先で炭火を囲む。
廻りはどちらを向いてもマンション。このあたりはほとんど私の少年期の住処とも重なるから、いかにこの手が増えたかが解る。この敷地だけ、どうして古家と老桜が残ったかというと、持ち主がその手の金勘定をしなかったから、という単純な理由になる。その子孫もそういう生き方の粋を遺伝子で受け取り、古家を用いて住まうことを決断した。昨年は母親のお腹の中にいたおじょーちゃんも、今は自らの足でこの家を踏みしめている。「変わらぬ大地と、新しい生命」、ちょっと大袈裟か。
「一年住んで、おじいちゃんおばあちゃんの家が漸く自分の家のように感じられるようになった。」という施主さん言。建築に沿う花あり、沿う言葉在り。