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2007. 10. 14

第14(日)技術を超えるもの-仙崖さん

かの禅僧、仙崖さんの登場する日曜美術館で目を覚ました。仙崖和尚(1750-1837)は、博多の地にはなじみの深い歴史的な偉人の一人、であること以上の知識を持ち合わせていなかった。西の一休さんといわれた仙崖は、美濃(岐阜)の生まれで、所縁により日本で最初の禅寺、聖福寺の代123代住職として迎えられた。禅の思想を庶民にわかりやすく伝えるための墨絵、禅的戯画の描き手として、国内のみならず世界的にも評価されているという。
ピカソもそうであったが、仙崖さんはいわゆる写実という基本的な素養ははやくに卒業し、人や動物をまるでマンガのような、しかし屈託のない画風の境地を追求していく。1801年まで生きた伊藤 若冲による精緻な風景の対局にあると言えば当場はわかりやすいだろう。若冲の精神論を直ぐに述べる知識がない一方、仙崖さんのそれは、いうまでもなく、「わだかまり」のなさである。ものごとをうみだそうとする人間が追い求める、技術的な「うまさ」のようなものへの執着がまったくない。あるのは、難しい思想をやさしく語ろうという姿勢、もしくはそんなたくらみすら薄らぐほどの、ヘタウマ加減である。只、好きで絵を描いている。只、している。作意が否定される、といより自意識がみなぎるような心のあり方では創造の究極には至らない、という日本の技芸の真骨頂である。
こういう視点で、建築の世界を見てみようといつも思うのだが、どうもうまくいかない。建築は絵と異なり、風雨に抵抗しなければならないからだろうか、仙崖さんの絵のような建築を、にわかに思いつくことができない。日曜日の朝から難問であったが、これはゆっくり考えていかねばなるまい。

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