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2009. 5. 24

第75(日)仮想店舗の街

不況と言われているけれども、道路を走る車の数と、飲食店の入れ替わりの頻度はそれには無関係のように思える。
我が通勤路の5分の道筋にある店舗の内、今年に入ってから既に、5~6件が新しく入れ替わった。街路はいわば入れ替え戦のスタジアム、テーマパークの様相である。
1Fラーメン店+2F水炊き屋がおよそ1年たらずでごっそり居抜かれ、1F生鮮食料品+2F食堂へ。(もしかしたらオーナーは同じかも)
焼き鳥屋、これもおそらく2~3年持っていない。一室が区切られ、2店の別の小料理屋へ。
前に何屋だったか忘れたが、ある日突然、パン屋が出現。
釣具屋が、寿司屋へ。
もやし料理と銘打っていたが、僅か半年で居酒屋へ。
居酒屋から焼き鳥屋へ、居酒屋から別の居酒屋へ。
美容室から別の美容室へ、そして、廃業。
その前はなんだったかよく覚えていないが、おばさん系の洋服店がある日突然出没。

我が町通勤路の通り沿いの2~3年を取り上げると、こんな感じで店が明滅をくり返す。店が変われば、そのまま前の店のままというわけにはいかず、大抵は以前の内装は解体され、まったく減価償却されていない内外装材が取り払われ、新調される。テナントとしてのハコは着せ替え人形のような頻度で、衣替えが成される。あらゆる店舗はそんなふうに一時のものであるから、安く早くが絶対条件になる。毎日その通りを往来する者からすれば、ある意味、代謝することは飽きない町並みのようにも見える。(もちろんこれは皮肉である。)コンピューター内の仮想店舗ほどではないにしても、現実の店舗の連なりはweb上の店舗さながらの更新が成されているといっていい。
店舗経営の心得のない者が外から一方的に観察するに、店舗のオーナーは、トライ&エラーの前提で出店を目論んでいるかのようである。周到に先を見越して出店というより、なにが当たるかはやってみないとわからない、駄目だったらさっさと店をたためばいい、という思惑のように見える。数約万円から1千万円以上の創業資金でもって博打を打っているかのようである。そういうサイクルを維持するお金はいったいどこから湧いてくるのだろう。入れ替わり戦と運命を共に蕩尽される資源の類は、どれほどだろう。店舗というビルディングタイプから出た廃材の量をゴミから判別することは困難だが、感覚的に無視できるとは思えない。少なくとも5分の通勤路の間にその出来事が展開している。そういう異常なサイクルの店舗作りの世界は、豊かな空間をつくろうとする意志のカテゴリとは壁一枚で別の業界だと言い放ちたいところだが、そうともいっておれまい。空間の設計者はいろんな意味において、そういった営為のアシスタントになる、と考えておいた方がいいかもしれない。

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