2023. 8. 22 permalink
参蔵 アルミと漆喰のレリーフ
参蔵の壁面を飾る立体絵画の制作。
最大のポイントは、異なる素材を扱う作家と職人をコラボレーションさせたことである。
単にアートを作るのであれば、アーティストに頼めばよい。建築設計者が携わることの利点を、「技術を持った複数の人々を取りまとめることを、職能として有していること」にあると考え、過去の百年蔵の改修に携わっている、金属彫刻家の中西氏と、左官職人の原田氏にお声がけすることとなった。
設計者的な立場で取りまとめるべく、再現可能なように、姿図はCADでおこした。
皆で共通の美学を持ちながらも、細かい部分は個人にまかせられるような曖昧さを、CAD絵と打ち合わせで擦り合わせた。
制作の手順は、上部のアルミ部分を中西氏が造形し、出来上がりの意図を汲み取りながら、残りの部分を原田氏が漆喰で造形。連歌の上の句、下の句のような関係性で、ものづくりが進んだ。
テーマは、百年蔵が博多に残る唯一の造り酒屋であることから、酒の醸造過程。
左から、澄んだ「水」、蒸し米から立ち昇る「湯気」、発酵の過程で醸成される「泡」、絞り 出された「酒」をイメージし、古くから運気上昇の意味が込められている「立涌文様」を変形させて、それらを表現した。
百年蔵の各所で仕事をしていた作家と職人が共同したことと、場所とテーマの必然性により、ここにしかない作品が出来上がった。
米満光平